新型コロナウイルスの影響で名古屋ではなく国技館での開催となった大相撲7月場所。
入場者数は制限され、応援も拍手のみという異例づくめの場所となりましたが、そのフィナーレは大相撲の歴史に名を残す感動的な場所となりました。
かつては横綱候補と期待されながらも膝の故障や内臓疾患に苦しみ、平成17年に大関の座を失ったあとは序二段まで転落した元大関照ノ富士。
それから2年10か月の歳月を経て幕内の土俵に戻ってきた不屈の男が幕の内最高優勝という、大相撲史上最大の復活劇を遂げたのです。
7月場所の照ノ富士を見ていると、ケガからの復活どころか「これは横綱になるのではないか」とさえ思えてきました。
ここではそのように思った理由を以下に述べたいと思います。
取り口の変化
以前の照ノ富士の取り口は上体がやや起き気味で、相手の攻めを受け止めておいてから仕留めるといったような、理詰めというよりはどちらかといえばスケールの大きな取り口が多くみられました。
このような取り口は膝へ負担がかかるため、結果的にケガにつながったのではないかと思われます。
今場所も前半戦は相手を抱え込んできめ出しで勝つようなスケールの大きな相撲がありましたが、九日目の佐田の海戦あたりから背中を丸めてからの前傾姿勢の相撲が目立ちました。
あの巨体が前傾姿勢で来るのですから相手力士にとっては相当な脅威となるはずです。
かつて千代の富士が、肩の脱臼癖を筋力トレーニングで克服し、さらに強引な投げ技中心の取り口から前まわしを引いての速攻に変えてから大横綱への階段を駆け上がったように、ケガを克服しそれを取り口に生かしていけば今まで以上に強くなれることを証明しています。
他にも横綱の武蔵丸が、それまで得意としていた突き押しを封印し、相手を組み止め、かいなを返してから勝負を決めるパターンで横綱まで昇りつめたように、照ノ富士も今場所の相撲に磨きをかければまだまだ強くなるでしょう。
さらに前傾姿勢での攻めは両膝への負担が軽くなってケガの回避にもつながるので、コンディションのいい状態で相撲を取り続けることができます。
精神面の変化
大相撲の看板力士である大関から序二段まで転落し、一時はどん底を味わった照ノ富士。
報道によれば何度も師匠の伊勢ケ浜親方に辞めたいと伝えたとの事。
そこから這い上がってくるのですから並大抵の精神力ではないはずです。
以前の大関時代とは比較にならないぐらい精神面が鍛えられていることは間違いありません。
環境の変化
現在横綱の白鵬と鶴竜はともに体調が万全ではなく、最近では休場が多くなりました。
このまま行けば引退の日もそう遠くはないでしょう。
そうなれば横綱は不在となり、大関の朝乃山や貴景勝、関脇の御嶽海や正代らと横綱の座を争うことになります。
横綱昇進への壁となって立ちはだかる力士が少くなった現在の環境は、照ノ富士にとって横綱昇進の追い風となると言えましょう。
まとめ
7月場所の相撲を見て大関復帰どころか横綱も夢ではない、そんな希望を抱かせてくれた照ノ富士の活躍。
「今は苦しくても夢をあきらめずに努力をすればきっと夢はかなう」
様々な苦しみを抱える多くの人々が自分の姿と照ノ富士を重ね合わせたに違いありません。
そんな照ノ富士の今後を大胆に予想してみました。
これから先もに更なる活躍を期待せずにはいられません。